くだらない事を考えて運転していたせいだろう。
もうちょっとで信号を無視しそうになった。
あわてて急ブレーキを踏んだら、停止線ぎりぎりで車が止まった。やばい。オマワリさんがいたら、罰金はまぬがれないとこだ。
冷や汗をぬぐいながら、スーツの上着からタバコを取り出して火をつける。
フロントガラスから見渡す交差点の光景は、夕暮れのせいかどこか切ない。
オレンジ色に包まれたビルの谷間を歩く人たちは、無機質な表情を崩さずに、せわしなく家路を急いでいる。
「彼らは、幸せなのかな?」
「夢は叶えられたのかな?」
思わず出た独り言は、自分への問いかけにも思えた。
タバコが一本灰皿に消えると、信号が変わった。流れに沿って車を移動し、コインパーキングに車を止めて駅の方に向かった。 |
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