京介と康一がやりあうのを眺めながら、僕は机に座ってコーヒーカップを手にしていた。こいつらが激しくやりあう時は、まず仕事がうまくいく。
文字通り、大船に乗った気分だ。いつもの通り。順調順調。
そう自分に言い聞かせようとしたせいだろうか。
この仕事の小さな疑問を思い出した。
この仕事の依頼を受けたのは、2週間前の事だった。
その日は、連日の徹夜や顧客との打ち合わせで、ストレスが爆発しそうになっていた。仕事がつまるとよくあることだ。
気晴らしにドライブにでかけ、港沿いのオープンカフェで車を停めた。
鍵をボーイに預け、海よりのテーブルに座る。
いつものことだけど、ここから眺める海の青さは特別だと思う。
オフィスのある街で、体と心にしみこんだ、すす汚れた物を全て洗い流してくれる。
周囲の席で談笑している人たちも、おだやかな人ばかりだ。
オフィスのある街で見かける人たちが持っている、ぎすぎすした雰囲気は微塵もない。決して周囲の人を詮索する目で見たりしない。
もっとも、会員制になっているから、そもそもそんな気苦労は必要ないんだけど。
そのことも、僕がここに足を運ぶ理由になっている。
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