無料オンライン小説 COLOR 人生は振り返るもんじゃないんだ!



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開発が急スピードで進んだ時期に、街の喧騒に息苦しさを感じた人たちが、こぞってこの場所に移り住んだ。いわゆる富裕層と呼ばれる人たちだ。

うらさびれた港町は、あっというまに、小洒落た街に変わった。

二、三年もしないうちに、海沿いの土地は、世界的な建築デザイナーが設計したマンションが立ち並ぶようになった。

南ヨーロッパを連想させるようなマンションや、カラフルな外装を施したお店。

芸術的な街並木や、通りに無造作に配置された前衛作家のモニュメント。

港からは、漁船やタンカーの姿が消えて、ヨットやクルーザーばかりが目立つようになった。

とても生活の場とは思えないゴージャスな変身ぶりだ。

でも、経済的に裕福な人だけが持ち合わせている、穏やかな雰囲気がある。

そのころからだと思う。海がまた輝くような青さを放つようになったのは。

金が海まで生き返らせたなんて、皮肉な話だ。

セレブマダム達の胸元を気にしながら、カプチーノをすすり、ノートパソコンでメールをチェックする。

その時に、この仕事の依頼メールを見つけた。

サブジェクト(件名)は仕事の依頼だったけど、疑問を感じるメールアドレスから届いたメールだったから、記憶にはっきり残っているのかもしれない。


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