「三番館って?」
彼は、何の店か思い出せなかったらしい。
「イタリアンレストランだよ。覚えてない? 中坊の時からある店だよ」
「あ、ああ、あの店ね。う、うん、いいんじゃない?」
何とも煮え切れない感のただよう反応だった。他の店を勧めたが、ター坊は何も言わなかった。
「じゃあ、とりあえず三番館にいこうか。取り合えず腹作って、気が向いたら別の店にいけばいいしね」
「そうだな、じゃ、そこにしよう」
夕日が輝くにつれ街並みは、すっかりオレンジ色に染まっている。家路を急ぐ人は圧倒的に少なくなっていた。
「ところでクリケンさあ、最近、どんな感じで女の子口説いてるの?」
しばらく無言のまま並んで歩き続けていると、唐突にター坊が聞いてきた。
「とりあえず、洋風居酒屋とかでワインを飲んで、ほろ酔い加減になった所で、オレンジ・レンジのDVD俺んちあるよ〜って誘う。これでばっちりでしょ」
「オレンジ・レンジ?」
「名づけて、オレンジ・俺んち作戦、でございま〜す」