「いつか、あそこに上ってやる」
「あのビルのテッペンに事務所構え、美人秘書(長澤まさみクラス)(笑)を雇って織田信長のような生活がした〜〜〜い!」
いつだっただろうか。そんな野心を心の中に飼っていた。それは今も自分の中にある。
そして着実にそこに近づいている。ゆっくりとオレンジ色に染まり始めるビルを見ていると、また眠っていた野心がたぎってきた。
「おい、大丈夫か?」
慌てて振り返ると、ター坊が首をかしげながら、僕の方を見ていた。
「なに、一人でにやにやしてるんだよ?」
「いや、何でもない。行こうか?」
少し恥ずかしいかったので、彼を急き立てて歩き出した。
「ところで、腹の方は大丈夫か? 飯でも食いながら仕事の話しようぜ。ま、仕事の話って言っても、つもる話も交えてだけどさ」
店の外に出るとター坊が話しかけてきた。
「じゃあ、三番館とかはどうかな」
僕がそう言うと、彼は少し首を傾げた。