「そんなんで女の子口説けんの? 本気?」
「イヤ、本気モード! マジフルパワーでございます」
「料理する男がモテるって聞いたことはあるけどな。料理番組のDVD見ながら女の子口説くってのは」
「は?」
「オレンジレンジって、料理番組かなんかじゃないの?」
「バンドの名前だよ。知らないの? それじゃ女の子は口説けないぞ」
「BOOWYとかはダメ?」
「BOOWYって、お前……、今どきの子はBOOWYどころか、氷室や布袋も知らない子がいるぞ」
僕は思わず苦笑してしまった。
知らない間に、ター坊は、時代の波に取り残されているらしい。
マジで寒すぎるギャグにギャップを感じてしまった。もっとも行政書士なんて、お堅い仕事についたのだから、無理もないけど。
「うーん、BOOWYとかに近いところといったら、グレイとかラルクとかかな」
「だめだ。全然わかんねえ。行政書士なんて仕事してたら、金持ってる年寄り相手の仕事が多いからさ、最近の音楽ってわからないんだよね」
「たしか三番館の横にCDショップがあったから、飯食ったら行ってみる?」
「そう? じゃあ最近流行ってるバンドのCDとか教えてくれよ」
ター坊は、少し照れながらそう言った。