店の中に足を踏み入れたとたん、大音量のビートに包まれた。

原色のランプが点滅する中、みんな隣には目もくれないで、目の前のパチンコ台やパチスロ台に夢中になっている。

呆然としてる僕のとなりを、どこかの土建屋のオヤジらしい男がそそくさと通りすぎていった。

そういえばこのおっさん、さっき店に入る前に、消費者金融の無人ＡＴＭコーナーから出てきてたんじゃなかったっけか。

なるほど、自滅コースまっしぐらってわけか。かわいそうに。

いくらパチンコで連勝したって、年利２９パーセントの利息をとられる金を種銭にしてたら、儲からないことくらいわかると思うけどね。

それこそ、笑うのはＣＭに出てくるチワワか、グラビアアイドルのお姉ちゃんだけだ。

僕は、お遊びでしかギャンブルをやらない。しかもやる前に幾つかのルールを決めている。

まず、初めにコーヒーを飲みながら、落ち着いて周りの状況を観察する。

手持ちの現金をよーく確認して、投資金額を決定する。
今日の勝ち組を見つけて、上手くすり寄る。

これに尽きる。冷静になれないやつは、絶対ギャンブルには勝てない。

いや、人生の奥義かもね。とにかくこの世の全ては熱くなったら負け。