僕は、外見はエリートで中身は腐りきった低俗な連中を見ながら、いつもこう思っていた。
「将来、財力や権力を手に入れたら、弱い人々を助けるために生きていこう」
しかし、金を手にするたびに、少しずつ変わっていく自分がいた。
いや、変わらないといけなかった。
金がないと何もできないし、自分の信じていたことを実現することもできない。
そうやって悩むうちに、この国のただれきってしまっている所が見えてきた。
そのただれた中で自分の信じたことを実現するのも金。
ただれた中で汚れないと手に入らないのも金。
ほんとにわけわかんねえ。
今は金を稼ぐことしか、自分の目標を見つけられなくなった。
そんな自分に息苦しさを感じることもある。
空を見上げると、少し楽になる。
よくわからないけど、楽しくて確かな物に包まれていたあの頃に、ほんの少しだけ戻れるからだろう。
夕方の空は、なつかしい雲が浮かんでいた。空をこうやって見上げるのは、本当に久しぶりだ。空を見上げたまま商店街を歩いていたらパチンコ・ラッキーの看板が目に入ってきた。
目線をさげて、正面入り口の自動ドアを見ると、どうやら繁盛しているらしい。
点滅する店内の照明に合わせて、テクノ系のビートが店の外に漏れている。
ガンガン響く音楽をかき分けて、開いた自動ドアの中にそそくさと駆け込んだ。