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オヤジさんが病院に入っていくと、斉藤さんは無言で再び車を走らせた。
僕らを乗せたオンボロワゴンは、少しずつ山の方へ向かって走って行く。
あれ、随分前に、この辺りに来た事があるな。
そうだ、康市の家の近くだ。
そういえば、康市からこの3ヶ月何の連絡もない。
メールが傍受されているとしても、何らかの方法で連絡は出来るだろ。
佐藤からも、何の音沙汰もない。
もう、僕の事なんか忘れちゃったのかな…。
そんな事を考えていると、いつの間にか木村屋旅館の前に辿りついていた。
斉藤さんは、旅館の専用駐車場に車を停めると、運転席から振り返り、僕に向かって話し出した。
「じゃあ、僕は送迎バスに乗って帰るから、栗原君はこの車で工場に戻って来て。あと、お昼までちょっと時間があるから、そこら辺をドライブでもして昼飯に間に合うように帰って来たらいいよ」
「はい、分かりました」
「じゃあ、宜しく」
そう言うと、斉藤さんはエンジンを掛けたまま、ドアを開け外に出ると旅館の中に入って行った。
僕は、後部座席のドアを開け一度外に出てから運転席に乗り込むと、ギヤーとクラッチの感覚を確かめた。
う〜ん。なんとかイケそうだ。
始めの方は、ギコチナイ運転だったが、しばらくするとスムーズに運転出来るようになった。
車内の時計を見ると、10時を回ったところだ。
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