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「栗原君。今日のレースは、是が非でも勝ちなさい」

「え?」

「いや…。まあ、こんな話をするのは大変失礼な事だと思うが。あなたは、どうも負け癖がついてしまっているようだ」

「負け癖ですか?」

「そう、男は人生の中で一度負け癖がつくと、中々泥沼から這い出せないからね…」

「そういうものですか?」

「ああ、そうさ。自分は何をやっても勝てないんじゃないか。永遠に幸せになれないんじゃないか。そんな事ばかりが頭の中をよぎって、いつも失敗を繰り返してしまう。今日のレースは、少々荒治療になるかもしれないが、あなたの人生をやり直すいいきっかけになるかも知れませんよ」

「ハイ、分かりました。自分なりに頑張ってみます」

あらためて、泰蔵のオヤジさんの話を頭の中で繰り返した。

確かにそうだ。負け癖がついている。

何をやっても、全く成功する気がしない。

良く考えると、東京で様々な人と出会い。塀の中にも入れられたし、いろんな知恵も身につけた。

僕なりに挫折を味わい、世の中の闇の部分も知ることが出来た。

そして、今ではそれに対応出来るようになっているはすだ。

問題は、僕自身の精神力の弱さか。

本当に、変わらないといけないな。

しばらくすると、僕らを乗せたワゴンは青田病院の前に辿りついた。

オヤジさんは、車から降りると僕と斉藤さんに向かって話した。

「帰りは、ちょっと寄る所があるんで、バスで帰るから迎えに来なくていいよ。じゃあ、お疲れさん」


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