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地獄の番犬


しばらく経つと、刑務官が点呼を取りにやって来た。

称呼番号の507を告げると、刑務官は何も言わずにその場を立ち去った。

それから、30分位すると食事が運ばれてきたので、トレイの上に置かれた食事を食べ始めた。

さすがに、量が少ない。気付くと食器の中は空っぽだった。

食事を、終えしばらくぼ〜っとしていると、刑務官が再び僕の房の前まで来て、取調室に行くように指示した。

刑務官の指示通りに通路を歩くと、日当たりの良い事務所の様な部屋の中に入った。

そして、作業机の前にあるパイプ椅子に座らされ、誰かが来るまでしばらく待つように言われた。

やがて、慌しい足音が廊下の向こうから聞こえて来ると、1人の男が僕の目の前に現れた。そして机の上に、ふろしきに包んだ沢山のファイルをドスンと置き椅子に腰掛けた。

見たところ25歳位の彼は、僕の顔を見ようともしない。ひたすら書類に目を通しながら、何か書き込んでいる。

そして、書類のチェックが終わると、顔を上げて僕の目を見ながら話し出した。

「上席検事の藤本大介と申します。では、栗原賢一さん。今から金融商取引法違反に関する取調べを行います。あなたは、ここに書かれている事を認めますか?」

彼は、そう言うと罪名の書かれた書類を僕の目の前に置いた。

何やら、たくさん罪名が書き込まれている。

「いいえ、身に覚えがありません。どうでもいいのですが、これって別件も沢山ついていますよね?」

「ハハハハ…。そうですね。でも、これは私がつけたのではなく、ウチの上の方が勝手につけたんですよ。まあ、検察の面子を守る為にね。そうそう、取調べを始める前に、この書類にサインしてもらわないといけないんですけど…」

彼は、そう言うと僕に1枚の書類を手渡した。

なにやら取り調べ手続きの事が、いろいろ書いてある。


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