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ケースの下の方には、無数の小さい管が繋がっている。

子供でも簡単に取り除く事が出来そうな代物だ。

だが、僕はためらってしまった。天涯孤独になった僕が、父親と再会出来たのだから。

たとえ機械の体になっていても、オヤジには違いない。

ビールで酔っ払って寝てる姿は、昔のまんまじゃないか。

本当にいいのか?

このバイオチップを外すってことは、酔って寝ている父親を金属バットで殴り殺そうとしているようなもんなんだぞ。

自分の中から響く心の声にとまどった。

他人には、きっと分からないだろう。

ようやく癒えた、家族を失った悲しみの傷を、また自分で切り裂かなければいけないのだ。

嫌だ……。また一人になりたくない。

「ケンちゃん、早く」

ヤスオが叫ぶ。

「賢一、何もたもたしてるんだ。ささっとやっちまえ」

京介が続いて吼える。

ダメだ。出来ない。

僕の頬を一片の汗が流れる。

たとえクローンだって、実の父親を殺すことなど出来るはずがない。

そうだ、このバイオチップを取り出し安全に保管したらいいじゃないか。

いや、ダメだ……。そしたら、どこかでまたオヤジを生き返らせることを考えて苦しむだろう。

そ、そうだ。昔、オヤジが言ってたな。人生は振り返るものじゃないって……。

「ごめんな、オヤジ。僕は、昔みたいにオヤジとずっと一緒にいたい。だけど、今の僕は仲間とこの国の人々の生活を守らないといけないんだ。さよなら、また会えたのに親不孝でゴメン。赦してください」

やっと、決心してバイオチップに手をかけようとした瞬間だった。オヤジのクローンが目覚めた。

「こら賢一、また悪さをしているな。罰だ、お前の仲間に裁きを与える」

ヤスオの体が一瞬硬直した。突如、彼は床に崩れ落ちた。

「ヤスオ!」


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