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「分からねぇ〜、ぜんぜん分からねぇ〜。まったく、何がどうなってんだよ。オヤジ、あんたは確かに死んだ。そうだ、確かに死んだはずだ。だって、僕が、あんたの葬式の喪主をやったんだよ。い、生きているのか?どこに、いるんだよ。どうせ、誰かがCGと合成した音声を操作してるんだろう?」

父親の映像は少し困惑した表情を浮かべると、一度深呼吸した後に、また僕に向かって話し始めた。

「賢一、私は、確かに生きている。いや、永遠の命を、手に入れたのだ。今、私は、お前の目の前にいる」

「悪いが話が見えない。どこにもいないじゃないか?」

「このシステム自体が私の体だ。私は、以前から人口知能プログラムの開発に着手していた。そして、成功を収めた。つまり、私は自分の命が尽きる前に、自分の脳の中にある思考回路と記憶をバイオチップに、エクスポートしたのだ。そして、同胞達と、このカラープログラムを、構築したのだよ」

「なんか分からないけど、機械の頭脳を手に入れたわけだな。でも、お前は、僕の父親じゃないだろう。単なる機械のかたまりだ。よく出来た親父のシミュレーターだよ」

「そうだな、確かにそうかも知れない。しかし、賢一。お前の事はいつも見ていたよ」

「どういう意味だ」

「お前は、まだ気づいていないのか。もしかすると、自分の力で起業し成功したと思っているのか?」

「ああ、そうだよ。当たり前だろう、実力だよ。それより、何故あんな事件を起こしたんだ?」

「事件?」

「とぼけるなよ。美森の大停電を起こしたりしたやつだ」

「事件か……。フフ、あれは事件ではない、制裁だ」

「無実の人々を痛めつけて遊んでいるだけだろう。そもそもあんたが人工知能を開発しようと思ったのは、原爆を体験して平和な社会を実現したいと思ったからじゃないのか?」

「その通りだ。だが、平和を維持するために人間は何をやってきた?若者を戦場へ送って、多くの命を失わせ、さらなる悲しみと憎しみを増幅させただけじゃないか。日本は、あれだけの苦しみを受けて、誰よりも戦争の悲惨さを知っていながら、多国の戦争に加担して、自分達は甘い汁を吸うようになってしまった。これが人としてあるべき姿かね。

もう、この国の人間は、私が管理してやらないと生きていけないのだよ。美森で大停電を起こしたのも制裁の一つだ。日本国民は環境問題を謳いながら、官僚・政治家・企業家達の単なる金儲けの尻馬にのって、一つも環境問題などには取り組んでいないだろ。

もし、環境問題と、平和に真摯に取り組むのであれば、物を生産する事を控え経済を縮小しなければいけないではないか。誰もが、心の奥底では、気づいているはすだ。賢一、お前もそうだろう」


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