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京介が最後尾から僕に問いかけた。

「立ってないよ。っていうか、すでに圏外だ」

「マジ、ヤバクナイ……」

どうやら、京介はかなり動揺しているようだ。

階段を下りるにつれて、やたら冷えこんできた。もっと、着込んでくればよかった。

いや、今からでも遅くない。一旦引き返して装備を整えた方がいいんじゃないだろうか。

階段を一歩一歩下りる間に何度も迷った。でも今から引き返していたら、いよいよ取り返しがつかないことになる可能性が高い。

ヤスオと京介は何も言わなかったが、同じ事を考えているだろう。僕も腹を決めて階段を下りることにした。

しばらくすると、緩やかな右カーブに差し掛かった。

「なんか壁が変わったね」

ヤスオが僕の後方で呟いた。

今まで側面に貼られていた赤レンガはなくなり、コンクリートのざらついた表面がむき出しになっている。

そのまま、下りていくと、つきあたりに木製のドアが見えた。

ドアの前に立ち、僕が室内の様子を確認する。

みんなの顔を見て、無言でうなずくと、ゆっくりとドアノブを回す。だが鍵が掛かっていて開かない。

「お前じゃ無理だ。どきなさい」

京介が僕の肩を軽く叩いて囁いた。そして上着の内ポケットから針金のようなピッキングツールを取り出した。

「京介、お前こんな物いつも持ち歩いているのか?」

「ああ、財布の中に入れてるよ。こういう時のためにね」

「まあ、確かにそうだが……。てか、普段ミョーなことに使ってないだろうな」

京介は、僕の話を無視して鍵穴にピッキングツールを差込んだ。

1分近くガチャガチャといじっていると、錠が開いた。

「空いたぜ。いくぞ」

京介は、鍵が開くのを確認してから、中に足を踏み入れた。僕とヤスオも無言で後に続く。


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