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「私は、このゲームであなたの実力を見てみたかっただけなんですよ。そのためにあらかじめ彼女の債権を町金から買って準備しておいたんです。無論彼女は何も知りません」

「そ、そう……」

「やはり、あなたは素晴らしい人物だ。栗原さん、私と組んで世直しをしませんか?あなたもご存知の通り、もう、この国は没落した。なんせ、国民総資産1400兆円に対して赤字国債800兆円以上切ってしまったんだから。普通の会社だったら倒産しているでしょう。そう思いませんか?

第一、これだけ莫大な借金があるのに日本中でまともな返済プランも話し合われてない。そこで、表は、栗原さんが。そして裏は私、上原和輝が仕切ってやろうじゃないですか」

「せっかくだが、やめとくよ。所詮、君らはヤクザもんだろう。君らみたいな人種と関わるとロクな目に会わないから」

「ヤクザもん?ヤクザじゃないですよ。私は闇の企業家。そして、あなたは表の企業家でしょう?あなたなら私の言っている意味がわかるはずだ」

「遠慮しとくよ」

「残念だ。あなたが一番関心を持っている情報も握っているのですが…。私達はカラープログラムの情報も把握していますよ」

「どう言う事だ?」

「手土産に話せる内容じゃない事はお分かりでしょう?私と取引をお考えいただけるならお話しましょう」

「分かった。じゃあ、今日はもう帰ってもいいだろう?」

「楽しい時間を過ごさせて頂きました。理香さんの借用書と誓約書も、お持ち帰りになって結構ですよ」

彼は、そう言うと自分の部下を呼び、僕らをビルの外まで丁重に案内してくれた。

ビルの外に出ると雨が降っていた。

そして、1台のメルセデスが止まっていた。

「どうぞ、お乗りください」

彼に言われるがまま乗り込むと、理香は窓の外を見ていた。

「栗原さん、さっきの話、是非検討してみて下さい」

彼は、僕にそう言うと運転手に自宅まで送り届けるように命じ、後部座席のドアを閉めた。

車が動き出すと、彼は深々と頭を下げた。

やがて、彼の姿が小さくなり、しばらくすると闇夜に溶け込んで見えなくなった。

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