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彼は、1枚目のコインを紙コップに入れて軽く振り、逆さまにしてテーブルの上に置いた。

表が出た。ほんの僅かだが緊張がほぐれた。

彼は、再び紙コップにコインを入れると僕に語りかけた。

「栗原さんは、こういうゲームは得意ですか?」

「いえ……」

「実は、私もダメなんです…。そういえば昔、運がなく痛い目に会いました。バブルがハジけた直後の94年の夏は苦しかったな…。あちらこちらに失業者が溢れかえっていて…。

そして、あなたや私のような若者は、この国の政治家や企業家達のケツを拭かされた挙句、地獄に叩き落とされてさんざんな目にあいましたね。

そういう状況下から、かたやカリスマ企業家へと、そしてもう片方は暗黒街のボスへと転進した。この違いはやっはり運なんでしょうか?そんなわけで、私は1度あなたのような悪運の強い人間と真剣勝負してみたいと思ってたんです」

「悪運ですか…。まあ、そうですね…。僕らの青春時代は、散々悪さをした政治家や企業家達のせいで汚れてしまいましたからね」

「私の父親は町工場を経営していたのですが、銀行の貸し剥がしにあって両親が自殺したんです。それで、大学を辞めて仲間とマフィアを作ったんですよ。ほんとはヤクザにでもなればよかったのですが、どうも極道の杯を貰って下積み生活って奴は性分に合わなかったもので…」

「そうですか…」

「でも、基本的には合法的事業を主な収益としているんです。ここは、政治家や企業家の方々からの要請でやっているんです。いわゆる、社交場の提供ってヤツですか」

「なるほど。社交場ね…」

こいつは、とんでもない奴だな。政治家を抱き込んで堂々と違法カジノを運営している。しかし、ヤクザから杯を貰う事もなく、堂々とこんな事が出来るっていうことは、そちらの方面にもかなり力を持っているという事なんだろうな。

彼との会話が終わる頃には、1セット目のゲームが終了していた。

彼が、紙コップを開けると表が出た。

結局、1ゲーム目は、裏が2回、表が4回で紙コップを6回振っただけで終わった。

僕の勝ちだ。ホットしたのと同時にアドレナリンが噴出してきた。

「ヨッシャー」

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