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親孝行と無言の謝罪

結局、駅前の銀行でお金を下ろした。ヤスオは次の給料日に旅費を返してくれればいいいと言って聞かなかったけど、やっぱりそういうわけにはいかない。

ヤスオのクレジットカードで決済してもらった自分の分の旅費を手渡して、二人で美森市に向かった。

ふるさとに着くと、すっかり夜になっていた。駅前は、相変わらずのままだ。

何度か仕事で美森に戻ったとはいえ、ゆっくりする暇がなかったから、懐かしい風景を見つけることもできなかった。それだけに、心がはずんだ。

「なんだかんだで遅くなったね」

手元の時計を見ると午後9時を過ぎていた。

「そうだね。東京からだと、やっぱり遠いから。オヤジとオフクロに迷惑かけたかな」

気付くと駅前のローターリーの所に、ヤスオの両親が迎えに来ていた。

ヤスオが僕に遠慮がちに話しかけてきた。

「ケンチャン、これからどうする。なんだったら、うちの車に乗っていく?送るけど」

「いや、いいよ。俺はそこいらを、ぶらついて帰るから……。それより、明日の夜、いっしょに食事しないか?」

「いいよ、じゃあ、どこで待ち合わせする?」

「今日は借りっぱなしにしておいたマンションに泊まって、明日は実家に戻って遺品の整理をするから……。そうね、明日の夕方の5時くらいに、またここで会おうか」

「うん、わかった。もし、何かあったら携帯の方に電話してね。じゃあ」

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