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しかし、今年の夏は暑い。ベンチに腰掛け、胸ポケットからタバコと携帯灰皿を取り出すとタバコに火をつけた。煙が青空に吸い込まれていく。容赦ないまぶしさがなぜか快かった。

僕がタバコを吸い終わるとヤスオが話しかけてきた。

「ガム……いる?」

「ありがとう」

隣に座ったヤスオが差し出したガムをかんだ。なぜか笑みが二人の間でこぼれた。それだけ疲れてたんだな。そういえば、本当に長かった。

オヤジが死んでから5年が過ぎた。がむしゃらに働いた。ITコンサルティングを大きくした。そして、さまざまな道をたどり、結局オヤジが築き上げた会社にたどり着いた。

高校出た後、プラプラしてる僕をこき下ろしたオヤジを見返してやろうと思って、ITコンサルティングを立ち上げたけど、結局親のすねをかじることになったってことか。

オヤジの理想と希望と信念があると信じて富国電気で1年間働いてみたけど、腐敗しきった経営陣と負債の山が目につくようになってきた。世の中、そんなにあまくないな……。

「ケンチャンは、いつ帰るの?」

「そうだな。これから銀行でお金を下ろして、駅に直行しようと思ってんだけど」

「銀行でお金下ろしたら手数料取られる時間だよ。カードは持ってないの?」

「持ってない」

本当はITコンサルティング名義のカードを持っている。だけど、COLORの問題が水面下で動いている以上、あまり使わない方が得策だろう。カード情報を盗まれて悪用される可能性だって否定はできない。

「じゃあ、僕がチケット取っておくから一緒に帰ろう。あ、その前に実家に電話しとかなきゃ……」

ヤスオは、携帯電話を取り出すと、実家の両親に電話をかけた。ヤスオが電話をする間、僕は、ぼんやり空をながめていた。

本当の幸せというものは、こういう何もない平凡な日々の繰り返しをいうのだろうか。

容赦ない日差しが目に飛び込んで、一瞬視界が消えた。その中に麻美の笑顔が見えた。

そういえば、麻美はどうしているかな?幸せになったのかな?考えるだけ野暮ってものか。幸せの絶頂ってとこだろうな。

「ケンチャン、どうしたの?チケットの手配すんだけど」

「そう、早かったね」

「どうしたのさ?なんだか様子が変だよ」

「なんでもない。それじゃ行こうか」

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