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「ウチの部署はフレックスだから」
「緊急対策課はそうかもしれないけど、庶務課は遅刻すると減給なんだ。寝てたいなら、僕だけ先にチェックアウトするけど」
「今日は日曜日で休日ですよ」
「あ、そうか。仕事中に会社の外に出ることなんてないから、なんか曜日の感覚くるってたみたい。ごめん」
「いや、いいよ。確保したパープル・パーツをバード博士に届けないといけないし。会社に戻ろう。とりあえず、着替えてすぐ行くから、ロビーで待っててよ」
「わかった。じゃあフロントの隣のロビーで待ってる」
ヤスオがロビーに向かうのを見送って、部屋の扉を閉めた。
ドアを閉めると、昨晩脱ぎ捨てたスーツが床に散らばっている。
スーツの上着を拾い上げて、タバコとライターを取り出す。ぼんやりした頭のまま、椅子に座ってタバコに火をつけた。意識がはっきりしてくるにしたがって、なんだか妙にばかばかしい気分になってきた。
くだらない。実にくだらない。僕はいつまでこんなくだらない事を続けなきゃいけないんだろう。
世間の奴らは楽しい休日を過ごしているのに、会社の尻ぬぐいをさせられてるなんて。うまくいったところで、なにか手に入るわけじゃない。せいぜい、富国電気での今の身分が保障されるのが関の山だ。
拳をホテルの扉に打ちつける。痛みとともに、頭がはっきりしてくるのがわかった。妙なことを考えるのはやめておこう。まずい。最近疲れが溜まりすぎてるな。
テーブルの上の灰皿にたばこを押しつけると、シャワーを浴びて、ユニットバスの洗面台でひげをそり、スーツに着替えた。
やはりスーツを着ると、仕事モードになる。いつのまにか僕も、サラリーマンになったんだな。荷物をまとめてロビーに向かうと、ヤスオと京介が僕を待っていた。
京介は、まだ少し顔が腫れていた。
「相変わらず、男前だな」
「うるせ〜よ。昨日は、ちょっと油断しただけだ。周とかいうあのガキ、今度見かけたらゼッテ〜仕留めてやる」
「ああ、そうだな」
そう言いながら、笑いがこみあげてきた。返り討ちにあうのは必至だろう。まあ、馬鹿やってる場合じゃない。会社に戻らないと。
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