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「なるほど」
ヤスオとの会話で気付いた。そういえば、いつからみんな携帯コンテンツを当たり前に購入し始めたんだろう。
「そういえば、京介は?」
「タクシー降りた時は一緒だったけど、いなくなったね」
ヤスオと二人で周囲を見回した。次々と電車に乗り込む人の中に、京介の姿はない。
「あ、あそこ」
ヤスオが、指差すほうを見ると、改札の外で携帯灰皿片手に、京介がタバコをふかしていた。僕たちと視線が合うと、あわてて煙草を消して、改札をくぐってきた。
「悪い。ホームは禁煙だからな。会社的にまずいだろう。富国電機の社員がマナーを無視して東横線のホームで煙草吸ってたなんて、2ちゃんにでも書き込まれたら面倒だからさ」
「マナー違反じゃなくて、法律違反です」
ヤスオが口をはさんだ。
「そうなの?」
京介が、携帯灰皿をポケットにしまいながら、ヤスオに尋ねた。
「健康増進法って法律ができたからね。公共の場所では煙草吸っちゃいけないんだ。会社も分煙のために、喫煙スペースができたでしょう?煙草吸わない社員から、いっそのこと全面禁煙にしろってクレームが増えて、庶務課も頭を痛めてるよ」
「ふーん、かたや煙草を自販機で売っておきながら、煙草吸うなっていうのも変な話だよな」
京介の言うとおりだ。たしかに煙草は体によくない。喫煙者は肺気腫とかいった呼吸器の病気に罹りやすくなるし、喫煙者よりもむしろ、周囲の人に深刻な健康被害をもたらす。両親が喫煙者の子どもは、喘息などの呼吸器疾患にかかるリスクが高いのも、医学的に証明されている。
そんなに体に悪いなら、法律で全面禁止にしちゃえばいいんじゃない?なぜそうしないんだろう?
なんのことはない。単に、税金の問題だ。喫煙者を狭い場所に押しこめることで、煙草にかける税金を上げたい連中がいるのだ。
現実の話、煙草にかけられている税金は、福祉や健康に使われているわけじゃない。僕が子供だった頃、JRが国鉄といって国のものだった時代に残した借金を返すことに使われていたりする。
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