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「そうですか…。いや、僕も以前送られて来たんですけど、どうも他人のメールアドレスを占有しているような感じだったんで…」

僕のとこに来ていたメールも同じような感じだった。Mr.COLORは何者なんだ。

仮に康一とヤスオの話が真実だとしても、そう易々とハッキングして、人のメールアドレスを占有する事なんかできないはずだ。

確かにアイデアとしてはいい線いっている。捨てアドとして取得され、一定期間利用されてないフリーメルを占有したって誰も文句いわないし、足が着かない。

僕らが言い争っているのをパーテーション越しに聞いていたのだろう。冴島直人が不審そうな顔をして、僕の元へやってきた。

「どうしたんですか?」

「いや〜。ちょっと…」

言葉を濁したら、冴島は、ヤスオに視線を移した。

「この人、庶務課の田畑泰男さんじゃないですか。栗原さん、この人をイジメちゃいけませんよ。会社に責任押し付けられて煮え湯を飲まされたんですから。

田畑さんは以前システム設計課にいたんですけど、総務省のデータベースに致命的なバグ出しちゃって、庶務課に移動させられたんですよね。ほんとは何の責任もないのに」

「マジかよ?」

ヤスオは僕の目を見ながら話した。

「あの時は大変だった。上の杜撰なマスタープランのせいで、十分な人員と時間を確保できないまま、巨大データベースを構築したんだ。その結果、あちこちバグが出て責任とらされたんだ。結局、ご大層なことをいいながら、この会社のやることってそんなもんだよ。君達もね」

ヤスオは、はき捨てるように言った。大企業ならではの矛盾だ。デカイ売り上げがあるのに1円でも経費を削って粗末な仕事をやらせる。今の日本企業の悪しき体質だ。

なんだか情けなくなってきた。何が天下の富国電気だ。人の幸せを生み出すなんて大義名分を掲げておきながら、実際は金と引き換えに人の関係を引き裂いてる。

僕とヤスオは保育園からの友人だった。でも、いつのまにか、イジメられっ子とイジメっ子に変わっていた。今もそれは変わってなかった。

それどころか、僕が受け継ごうとしている富国電機は、ヤスオをイジメるどころか、とことんこきつかって搾取し続けた上に、死に追いやろうとしてたんだ。とことん情けなくなった。

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