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「なるほど、そういうことですか。これは会社の危機に関わる問題になりますよね。最近は家電製品も、ほとんどが内蔵したプログラムで動いてますからね。

電子レンジや炊飯器みたいな熱源を扱う家電製品が一斉に暴走しはじめたら、一体どうなることか。損害賠償どころじゃすまないでしょう」

佐藤は高まってきた緊張を隠せないのか、しきりに眼鏡をハンカチで拭いていた。

「カラープログラムを停止させる方法はわかってるんですか?」

「残念だけど、確実な方法はまだわかっていない。今のところ、3つのカラープログラムが確認されている。色素の3大原色R・G・B、レッドパーツ、グリーンパーツ、ブルーパーツと呼ばれているものなんだけど。

今のところ、これらのプログラムが単独で動作しているらしい。もし簡単にモジュールが結合できるのなら、複数のプログラムを載せたナノロボットが存在するわけはないからね。

ただ、それもあくまで憶測の域にすぎない。なんらかの加減で、もしCOLORプログラムのモジュールが結合した場合、新たな攻撃をしかける可能性がある。

富国電機のラボ(研究室)から流出したナノロボットは2000機くらいあるらしい。とても全部のナノロボットを回収することは無理だ。それで、全部のカラーパーツを回収して、ナノロボットの動きを止めようと考えたんだ。

まず手始めに、僕とゴリさんと康市で、藤田さんの家まで出かけてカラープログラムのレッドパーツを確保したってわけ」

「結局、まだ全貌は見渡せていないんだな」

京介がため息をついた。

「ここはポジティブに考えよう。レッドを捕獲したんで、あと2個でしょう? さっさっとやって人生をエンジョイしましょうよ。逆にいえば、全部捕獲して、COLORプログラムをストップさせれば、富国電機もITコンサルティングも安泰だ。それどころか、役員連中を引責辞任させて、がっぽり出資金をふんだくれるぞ」

「そうだな。しかしまあ、そううまくいくかな」

京介はいつになく弱気だった。場を和ませるつもりだったが、通じなかったようだ。京介は、棘のある言葉を吐き捨てた。とたんに険悪なムードになった。

ほんの一瞬の沈黙の後、康市が僕に話しかけてきた。

「賢一さんの言うとおりですよ。気が滅入る話ですけど、前向きに考えましょう。とりあえず一つ修羅場越えたんですから何とかなりますよ」

「そうだな。賢一が富国電機に出向して、別の部署に配属されて縁が切れたかと思ったが、どうやらとことん腐れ縁らしい。佐藤も、康市もな」

京介がタバコを灰皿に押し付けながら笑った。緊張が一気に溶けて、みんなに笑顔が戻った。

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