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「おお、そうだな。あれから話したらいいか。僕と京介が富国電気に出向してしばらくたったころにね、緊急役員会が開かれたんだ。覚えてるか? 僕たちがブルー・アース・プロジェクトのプレゼンをやって、富国電機の出資が決まった後、美森で大規模な停電があっただろう」

「覚えてますよ。真っ暗な中、みんなでタロチャンを出て、みんなで賢一さんたちを探しましたから。それが富国電機と、どうつながるんですか?」

少々回りくどい話に、佐藤はいらついた表情を見せた。

「結論から言うと、実は、あの大規模停電は富国電気が密かに研究・開発していた人工知能プログラムが暴走して起きた事件だったんだ」

「それがCOLORってプログラムなわけですね」

「そう。人工知能プログラムCOLORは、もともと富国電機を起こした僕のオヤジが開発したものだったんだ。Ver1.0のソースは、産業用ロボットが工場の流れ作業の中で、溶接位置を自動調整するような簡単なものだったんだけど、改良が加えられて、ナノロボットを操って自己増殖するような高度なものになったらしい。

河島栄太、今さっきいたゴリさんね。あの人達が富国電機で極秘裏に推進していたカラープロジェクトが研究開発してたんだけど、誰かがラボ(研究室)からカラープログラムをナノロボットにインストールして持ち出したらしいんだ」

「それが電力会社の配電システムを狂わせたんで大停電が起きたと。そういうことですか?」

佐藤は、息苦しそうな顔をして眼鏡をいじった。

「そう。ただし、ここでミソになるのが、カラープログラムは既存のコンピューターウイルスのように、単独では既存のコンピューターシステムなどを攻撃できないんだ。ナノロボットにインストールされて、始めて活動するようになるらしい。

ナノロボットにインストールされたカラープログラムは、人や物に付着したまま移動して、電源を補充するために、家電製品なんかの電源回路を探してもぐりこむらしい」

「人工知能というよりは、生物ですね。なんだか人体に寄生する病原体ウイルスのような」

「そうだな。ネットワークを遮断すれば感染が防げるわけじゃないから、なかなか厄介だ。おまけに、攻撃力だけは従来のコンピューターウイルス以上の力を持っている。

家電製品やPC、ネットワークサーバーの電源回路を見つけて充電した後は、自動的に集積回路を探して、悪意のあるプログラムをインストールしたり、インターネット経由で他の家電製品なんかにパラサイトしたナノロボットと通信して、悪意のあるプログラムをインストールするらしいんだ」

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