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「僕らも同じですよ…。後ろの七三・メガネが学卒ですけど、僕と、後の二人は高卒です。強いていえば、アウトロー学部チンピラ学科卒業ってとこですか。高校出た後、仕事がなくてブラブラしたあげく起業したんですけどね。
おかげさまでビジネスは成長してますけど、これでよかったのかどうかは、いまだによくわかりません。本当に自分がやりたかったことか、いまだによくわからないし。億万長者になるより、自分が本当にやりたい職業に就く方が何百万倍も幸せですよ。絵、早く売れるといいですね」
「実は最近、絵を描いてないんですよ。もう一生このままかなと思って半分あきらめてましてね。でも、また明日から絵を描いてみようと思います。チャンスはいくらでもありますよね」
「そう思います。未来は掴み取るもんだと思いますよ」
彼は話をやめるとハンドルを握りしめた。しばらく、静かな時間が続いた。
ガラス越しに流れていく町並みが輝いて見える。故郷に帰ってきたというのに、どこか実感がわかなかった。だが、違う。僕は生きている。佐藤も京介も康市も。そしてこの街も。
隣でステアリングを握っている運転手は、僕と同じ街で生まれた。
年もほぼ同じなのに、全く違う道を歩いている。だけど、手に入れたい未来を目指して必死に今を生きているのは同じだ。
僕がほしい未来はなんだろう?富国電気をさらに大きくすること?それもある。でも今、美森に帰ってきて最初に思い浮かんだのは、麻美のことだ。正直言うと、麻美のことをまだ好きなのか、よくわからない。ペコちゃんとの間で気持ちが揺れている。
今度こそ麻美に会って、自分の気持ちを伝えよう。COLORの問題が解決していない以上、また危険な目に巻き込まれるかもしれない。人間っていう奴は、どこでどうなるか分からないからな。
麻美とペコちゃんの顔が交互に頭の中に浮かんでは消えた。
そのたびに、自分の優柔不断な思考に落胆した。
後部座席からは、康市のイビキが聞こえはじめた。さすがに、くたびれたんだろうな。
僕も頭の中が、ぼんやりしている。佐藤と京介は黙ったまま、ガラス越しに流れていく町並みをぼんやりと見つめている。
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