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康市が小さく指差す方を見ると、長い廊下の突き当たりに大きな扉があった。僕らは、その扉まで慎重に近づくと、ドアノブに手をかけた。
「覚悟を決めろ。行くぞ。ナイフとスタンガンを用意しとけ」
康市は無言でうなずいて、サバイバルナイフを抜いた。僕もゴリから渡された拳銃を抜いた。ドアノブをゆっくりあけて、部屋の中に侵入した。
部屋は、誰かの寝室らしかった。メイド服を着た女性がベットメイクをしている。一気に拍子抜けした。メイド服を着た女性は見た目20代前半くらいのようだ。仕事に集中しているのか、僕達には気付いていないようだ。平然とシーツを整えている。
僕は彼女に後ろから近づくと、左手を背中に回し後ろにいる康市にVサインをした。呼吸を止めて、一気に彼女に飛びかかると後ろから羽交い絞めにした。
「康市、今だ。早くスタンガンでやっちまえ」
「ちょ、ちょっと賢一さん」
「かまわねえ。殺すわけじゃねえ。急げ」
僕の手のひらを押しのけようとして、彼女は必死にもがいている。
「もういい。貸せ!」
片方の手で康市からスタンガンを取り上げると、僕は彼女にスタンガンを押し付けた。その瞬間、彼女は意識を失って、ぐったりとした。
「賢一さん、何てことするんですか。彼女気絶してますよ」
「バ〜カ。そいつは男だよ。メイドの足首がこんなに筋肉質なわけないだろう」
「あ……ほんとだ。おまけにチ○コついてる。もっこりしてら」
「スナイパーやテロリストは体格のいい、むさ苦しい男のイメージがあるだろう。実際に工作活動をやっている奴は、こんなナヨナヨした女の子みたいな奴なんだ。この身なりなら誰にも気付かれずにミッションを達成できるからな。
よく見てみろ。ヘアピンが、ポリカーボネイトでできた特殊ナイフになってる。真正面から近づいたら、これで頚動脈を切られるところだった。」
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