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◆兵隊からの贈り物◆
不安だったけど、昨日東京から出てきたばかりのところに、早朝から登山する羽目になって疲れきっていたから、休憩できるのはありがたかった。沈黙が重くなりはじめたころだった。いきなり少し白んだ空が明るくなった。
「あれ? 花火?」
「だまれ」
僕が大声を出しそうになると、ゴリが慌てて僕の口を手で塞いだ。
ゴリは僕の耳に近づいて、小声で話だした。
「あれは、味方の作戦開始の合図の照明弾だ。予定通り進行すれば、もう一度照明弾があがるはずだ。おとなしく待機しておけ」
味方? どういうことなんだ?
空を眺めるゴリの横顔に緊張感が漂っている。息を潜めてしばらく待っていると、照明弾があがった。一瞬だったが、暗い森が真昼のように明るくなった。
ゴリは素早く立ち上がると、叫んだ。
「よし、行くぞ。お前らも急げ。もたもたするな」
「ちょっ、ちょっと待って下さい、ゴリさん。行くっていっても……。なんか作戦があるなら教えてもらえませんか」
「とにかく歩け。もたもたしてたら命取りになるぞ。次のポイントについたら教えてやる。死にたくなかったら、急いで俺についてこい。GPSのスイッチは入れておけよ」
納得いかなかったが、仕方ない。既に闇の中に飛び出したゴリを見失わないように、急いで後を追う。
「康市、急ごう」
「はい」
後ろを振り返ると康市が僕らの後をついてきていた。闇夜ではっきり顔が見えないが、距離が少し縮まると、不安感で一杯の表情が感じ取れた。
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