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「そうですね。東京って異常な街ですよ。35℃以上あるのに、甲子園で野球やっている奴らみたいなもんです。北欧のサッカー選手なんて30℃越えたらみんなピッチから引き上げますよ」
冴島は、そう言うと空を見上げながら煙を吐いた。
「なんか日本人って精神論&根性論が大好きなんだよね。高校野球も秋にやった方が選手達も本来の力を出せるんじゃいない? アホな爺様達は、灼熱地獄の中で戦うことを美徳と思ってるんだよね。それでいて、クーラーきいた部屋で高みの見物決め込んでるんだから、まったく、どうしようもないね」
「確かに。ところで、最近小耳にはさんだんですけど、なんか東京駅の八重洲口方面の高層ビルを改修して、東京湾から流れ込む風を、丸の内まで送り込むようにするらしいですよ。そうなれば、体感温度が2、3度くらいは下がるみたいです。東京駅をはさんで八重洲口方面の銀座から、日本橋ラインに立っている高層ビルが、熱波の吹き抜けを妨げているらしいんですよ」
「へぇ〜よく知ってるね。で、それはいつごろの予定なの?」
「少なくとも、2,3年後って話じゃないですね。霞ヶ関でたむろってるオッサン達の計画ですから。夜なんか、東京は寝苦しいですから、早く何とかなるといいんですけど。賢一さんは、都内に住んでるんでしたっけ?」
「そ、僕は美森市から一緒に来た早見と同じ晴海のマンションに住んでる。一緒といっても部屋は違うけどね。早見の奥さんはハルミて言うんだけど、昔、彼女の実家が晴海にあったらしくって、名前もそれにちなんだらしいよ」
「早見さんとは兄弟同然と聞いていますから、同じマンションなら楽しいですね」
「それがさ、滅多に会わないんだよね。早見の部屋と僕の部屋は1階しか違わないんだけどね。まあ新婚さんだから遠慮してるのもあるんだけど、東京になじんできたってのもあるかもしれないな」
そう言うと、僕は椅子に思いっきりもたれて、空に向かって煙を吐いた。煙が青空の中に吸い込まれていくのを冴島が見つめていた。
「そうですか。都会は近隣との付き合いがなくなりますからね」
「君は、どこに住んでるの?」
「高円寺です」
「高円寺ってどこにあるの?」
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