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◆結婚観と孤独感◆
カバンから携帯灰皿を取り出すとタバコを消した。
力の入らない体に気合を入れて立ち上がり、カバンの中に携帯灰皿を戻すと出口のドアへ向かって歩き出す。
ちょうどドアの所まで来ると、ドアが開いた。
その直後、チビで丸刈り頭にスーツの男が出てきた。なんなんだ。うちの社員か? 就業中に何やってんだか。あ、僕も人の事は言えないか。
よく見ると冴島だった。冴島直人はチョット変わり者で、社内で変人扱いされている人物だ。でも僕が富国電気に始めて出社した時から優しく接してくれた人間だから好意を持っている。おまけに僕の向かいの席に座っているので、なにかとありがたい存在だ。
「賢一さん、またさぼってたんですか?」
「お前だって、人のこと言えないだろう」
「まあ、それはそうなんですけどね。まあまあ、もうちょっと向こうでくつろぎましょう。どうせ、僕らがいなくてもこの会社は動いてるんですから」
その通りだ。彼に誘われるまま、またベンチに腰掛けると、彼はタバコをふかしながら話だした。
「なんか今、会社の中でタバコ吸えないでしょう。仕事やりながらタバコくらい吸わせてもらわないと仕事もはかどりませんよ」
「会社だけじゃなくて、東京って禁煙の場所がやたら多いからね。すごくストレスたまるよ」
「そういえば賢一さんは、東京に来てどれくらい過ぎました?」
「え〜と、8月の下旬だったから、もう3ヶ月くらいになるかな」
「こっちには、慣れました?」
「いや、全然ダメ。上京して来た時、気温がもう40℃近いのにみんなスーツ着て歩いてるのには、さすがに参ったな」
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