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佐藤は、ほっとした表情を見せた。だが、にわかにまた表情が曇った。

「あれ? 停電ということは……賢一さん、まずいですよ。うちのサーバーの対応しないと。自社サーバは自動でバックアップ電源に切り替わっていると思いますけど、どんなに持っても10時間足らずで電源が落ちます」

「なんだと? それまでに停電が回復しなかったらどうなるんだ?」

「京介さん、落ち着いてください。まずはサーバーがバックアップ電源で動いているかを確認します。それが確認できたら、10時間は余裕がありますから、なんとか時間内に、電源確保を急ぎましょう。もしその間に停電が復旧したら、無駄な作業にはなりますが、損害にはつながりませんから」

佐藤は冷静だった。おまけに明晰な判断だ。さすがわが社切ってのインテリだ。彼の頭脳はこのような大惨事の中でも、フル回転しているのだろう。

「携帯から確認してみました。HPにアクセスできるところをみると、無事にバックアップ電源に切り替わって、サーバーは動いているようですね。とりあえずここを離れて会社に戻りましょう」

そうだ、人の事ばかり気にしている暇なんてない。世の惨劇は僕達にもふりかかっているのだ。しかし、どうしたら。佐藤にかなうわけもないが、必死になって頭を回転させた。

「そうだ。ジェネレーターを借りよう。工事用の重機レンタルから借りられるんじゃないか? 大型ジェネレーターの発電量なら、うちの事務所まるごと電源を確保できる。急いで業者をさがそう」

僕がそういうと、佐藤は少し表情を曇らせた。

「賢一さん、こんな真夜中ですよ。おまけに大惨事が起きていますから、官公庁が業者の機材を独占してるはずです。まず無理ですよ。それにどうやってジェネレーターを運ぶんですか? トラックも併せて調達しないと無理ですよ」

確かにそうだ。彼の言うとおりだ。でも、なんとかしなければいけない。

何かいい方法はないか……苛立ちのあまり寒気を強く感じて鳥肌が立った。途方にくれて周りを見渡すと康市の顔が目に入ってきた。そうだ、康市だ。

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