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「上手くやるつもりはない。ビジネスパートナーとして組むことも正直言って迷ってる。オヤジがだまし討ちにあってんだぞ。実の兄弟を裏切る人間を信頼できるわけないだろう」京介は、無言のまま、タバコをふかした。

「今日もそうだ、結局俺に恩義をきせて上手く取り入って、富国電気の後釜に据えるつもりだろう」

「結構なことじゃないか。社長の椅子を佐藤に譲るのなら、問題はないだろ? 今回のプロジェクトで富国電気から出資してもらうのなら、より強い体制が作れる」

「そんな良心的なことなんか、あいつは考えてないよ。僕を後継者に仕立て上げて、自分は影で院政を敷こうっていう魂胆なんだろう。とてもじゃないけど、あいつは信用できない。この世で信頼出来る人間は、お前しかいないいんだ」

「麻美がいるじゃないか……」京介はしばらく沈黙した後、そうつぶやいた。

「今日、少しだけ話したけど、気持ちはゆらいでいるよ。二人とも長く離れすぎた。離れている間に積もったことを二人で見つめられるか、正直言って自信がない。

一応メルアドと電話番号教えたけど、連絡をくれるかどうか、かといって、自分から連絡を取るつもりもないしね」

「そういえば、康市は何やってるんだ?」

「さあ」二人してブランコを降りて近づいてみると、康市は砂場の奥のほうで、マグライトでなにやら何かを照らしているようだった。後ろから覗き込んでみると、捨てられたエロ本を一冊ずつ丁重に読んでいた。

「昼間、無修正DVDでこづかれたのに、今度はエロ本かよ」京介が呆れた声を出した。

「まったくお前と言う奴は、どこまでエロ根性入ってんだろうね」

「いや、これなんですけど、ちょっと見てくださいよ」京介と二人で覗きこんでみると、ヤンキーオートという本の、自慢の愛車コーナーだった。

「これ、俺が高校2年の時にパクられたバイクなんです。しかもこれ乗ってる人って、なんか今日のアキラって人に似てません?」

「マジかよ」京介がマグライトを取り上げて、本を照らした。確かにアキラだった。パクられたのも、康市のバイクに間違いないらしい。バイクのロケットカウルに丸印に「康」のマークが入っていた。

僕と京介は大爆笑した。

とりあえず、腹を抱えて笑った。あまりに笑ったので涙が中々止まらなかった。その時だった。一瞬、耳が聞こえなくなるような破裂音が響いて、公園の水銀灯が消えた。


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