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「やられたよ。ビジネスモデル特許を申請してなかったろ? 今回のプレゼンで仕事を受注しても、うちは大損害だ」

「なんだ。お前知らなかったの? ビジネスモデルに限らず、特許って、特許庁に申請する前に公表すると特許を取れなくなるんだぜ」

「え? そうなの?」

「そ、佐藤が教えてくれたよ。さすが法学部を出ただけはある。そのつてをたどって、国際特許を扱っている弁理士事務所に頼んで、先進国全部に特許を出願してある。ついでに、ブルー・アース・プロジェクトの商標とサービスマークも全部出願してあるよ。

ハイエナしようなんて、知的財産のことについて、何にも知らない無知な連中だからほうっておけ。特許が降りて、侵害がみつかったら、ター坊と連れの弁護士を使って、しっかり金をかっぱいでやるから」

助かった。これで仮にプレゼンに落ちても、莫大な収益を手にすることができる。

「サービスマークは、引きこもって一度も出社してこない社員のデザインを採用した。商標権が取れたら、ボーナスはずんでやらないといけないな。それよりほれ、プレゼン続けようぜ。この仕事までとってしまえば、俺たちの一人勝ちだ」

その時、レーザーポインターの光が僕の顔に当たった。ライトを浴びてるせいか、暗がりの会場の様子が全く見えない。赤い光の2回の点滅。よかった、康市が戻ってきたんだ。助かった。

僕が脱力していると、康市は壇上に上がってきて、すばやくDVDプレーヤにディスクを入れた。

「もう、大丈夫だ。DVD流すぞ」京介が耳打ちした。

「それでは、弊社のブルーアースプロジェクトの概略について、ご静聴いただいたところで、これから、詳しいご説明をさせていただきたいと思います。

弊社プロジェクトの詳しい説明につきましては、DVD映像をご覧いただきながら進めさせていただきたいと思います。

なお、映像が進行して行くと同時に皆様のノートパソコンに詳細な資料が映し出されます。では、よろしくお願いします」

そう言うと、黙礼して、壇上を降りて自分の席に着いた。

しばらくすると、会場の照明が落ち、プレゼンテーション映像が流れ出した。

「よかったですね。DVDが間に合って。ところで、見積もりやり直したんですけど、これはどうしましょうか?」

席に着くと、佐藤が話しかけてきた。


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