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僕は言葉を失った。
「元気そうだな」
とりあえず、そう言うのが精一杯だった。
「ああ、おかげさまでな。でも、今日は、あの時のケリをつけてやるよ」
そう言うと、アキラは、麻美の方を見て手招きした。麻美が席を立って近づいてくると、胸が苦しくなった。
「彼女は、ウチのコンテンツプロデューサーの白石麻美だ。今日は彼女がプレゼンやるからよろしく」
僕は立ち上がって、握手を求めたが、麻美は、無言で会釈しただけだった。
「麻美。君は彼らと名刺交換でもすませておいて。今後のこともあるから。じゃあ、後はプレゼン会場で」アキラはそう言い残すと、一人で喫茶店を出た。
「賢一、俺たちは席を外しておくから」京介は、麻美と僕のことを気遣ってくれたのか、康市たちと、他の席に移動してくれた。
「久しぶりだね」
アキラが喫茶店を出るのを確認した後、搾り出した最初の言葉がそれだった。麻美と別れてどれくらい経ったんだろう。あれだけ会いたいと思っていたのに、会えなかったのに、こんな形で再会するなんて、むごい話だ。針のむしろに座らされた気分だった。
「あれからどうしてたの?」
「まあ、適当にね。そんなこと話す必要ないと思うけど? 名刺交換させていただけますか? 私、スカイネットのコンテンツプロデューサーをやらせていただいています」
そう言うと、麻美は名刺を出した。僕も仕方なく、名刺を出した。事務的に名刺交換を済ませると、麻美は僕の名刺をファイルにしまった。その手際のよさと冷たさから、昔の笑顔は思いだせない。アキラと同じように、麻美も変わった。いや僕も変わった。
みんなが変わるだけの時間が過ぎたってことなのだろうか。
「一つ、聞いてもいいかな?」
「なんですか?」
「僕が会社を作った時、そんな仕事はやる気がないって断ったよね? それなのに、どうしてアキラと一緒にいるの?」
「ノーコメント」
冷たい反応だった。僕のことは、全く過去の存在になってしまったのは、間違いないらしい。
「正直言うと、仕事の付き合いでも、あなたとは言葉を交わしたくないわ」
きつい一撃だった。女という生き物は、二十歳を過ぎると男を一言でやり込める技術を、いつのまにかマスターしている。筋金入りの大和男児でさえ、一撃でのされてしまう破壊力だ。
「そっか。じゃあ、何も言わない。ただ、同じ業界にいるんなら、会社として、それなりの付き合いは発生すると思う。そのあたりは大人になって、これからは交流を持ってほしい」
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