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「俺を撃つのはかまわないが、一つだけ言っておきたいことがある」
「なんだ?」
京介がトカレフを構えながら言った。
「お前らも気がつけ。今のままじゃ、そのうち、お前たちも俺みたいになんぞ。結局、お前も警察と商店街のおっさん連中に利用されてるだけじゃねえか。
俺を始末した後はどうなる。そのうち、商店街の爺さん連中は、賢一と京介を目障りだと言い出すだろう。そのうち、二人とも、今のお前たちみたいな連中から消されることになる。こんなこといつまでもやってられねえぞ」
京介は頭に血が昇ったみたいだった。無言でトカレフを構えた。僕は京介にトカレフをおろすように告げた。
「アキラ、俺はギャングはそろそろお開きにして、まともに働こうと思ってる。将来の事もそろそろマジで考えたいしな」
「そうだな。それがいい。アキラの言うとおり、このままじゃ、ここにいるみんながいつか全員消えるだけだしな」
京介はそう言うと、トカレフをパンツのポケットにしまった。
「アキラ、オレ会社作ろうと思ってんだよ。好きな時間に好きなだけ働ける会社だ。もちろんネクタイなんか締めなくていい。好きな服を着て出社しても誰にも文句言われない会社だ。いっしょに働かないか。商店街の人達とか警察とかには、俺が話しつけてやるから」
「それじゃしめしがつかねえだろ? 俺らのルールは裏切り者には制裁だ。報復は正義なり、だろ? お前たちと一緒にはいられないよ。それが俺のけじめだ。餞別をくれるつもりなら、見逃してくれないか? お前らが逃がしてくれるなら、俺はこの街から出て行って、やり直すよ」
「わかった」
京介がアキラのロープをほどいた。その瞬間、他の連中がアキラに向けて、トカレフをかまえた。
「つまんねえ真似はよせ。アキラはけじめつけようって言ってるんだ。つまんねえケチつけるなら、俺が相手になるぞ」
京介の言葉に、みんな慌ててトカレフをおろした。
「賢一、京介、ありがとう。じゃあな」京介が泣きながらアキラを抱きしめた。
「頑張れよ」京介は涙でグチャグチャの顔でアキラにエールを送った。アキラは京介に付き添われて、しばらく歩いた後、振り返った。
「賢一、悪いけど後のことはよろしくな。それと俺も会社作るわ。成功したら胸張ってこの街に帰って来るからな。その時は、きっちり勝負つけてやるからな」
アキラに付き添った、京介のうしろ姿が震えていた。
あれから、もう七年の歳月が流れていた。
そして、あの夜とまるで別人のようにセイカンな顔立ちになったアキラが、目の前に立っていた。
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