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そんなことを思いながら、助手席に回りこんでドアを開けた。乗り込むと、車高の高さに違和感を覚えた。
「見晴らしよくて、乗り心地いいでしょ?」
「まあな」
とりつく島もなさそうだ。若いモンとの価値観の違いは埋められそうにない。こうやって僕も、オッサンになっていくのだろうか。
「じゃあ、いきましょうか」康市は、素早くエンジンをかけて車を動かした。
「道、空いてるみたいですね」
「そうだな」
コンビニの駐車場から出て、1つ目の交差点で信号が赤になった。
「康市さあ、お前いつもコンビ二の前に車停めてんの?」
「うん」
信号が青に変わって、車が動き出す。一瞬、間が空いたが、僕は言葉を続けた。
「康市よ、俺たちは日本全体の企業を相手にしてるけど、地元とも共存しないといけないわけよ。そんなわけでさ、無駄金払うばっかだけど、いちおう、商店街の組合にも入ってんのね」
「それが何か?」
「何か? じゃねえよ。商売仲間の邪魔になるようなことしちゃまずいだろ。スカイパークの駐車券やるから、明日から向こうに車を止めてくれ」
「あ、そうか。たしかにまずいっすね。でも、今まで何も言われなかったってのを見ると、俺たちの会社って、商店街の親父連中も頭が上がらないんすね。なんか気分いいっす」
馬鹿か? こいつ。まあいい、今は何を言っても無駄みたいだ。
「頼んだぞ。こういう些細なことで、結構もめごとがおこるんだ。地元につるし上げられたりすると面倒くさいからな。それとプレゼン会場に行く前に、ター坊の事務所にちょっとよってくれ」
「うん」
むかつく返事だ。タメ口ききやがって。プレゼンがなかったら、車停めさせて、道路の真ん中でボコッてやるところだ。とはいえこいつは、言われた事は忠実にこなすから、憎めない部分があるけどね。
そういえば、こいつと出会って、結構な時間になる。
昔、康市がドラムをやっていたミッシェルマニアというバンドがあり、この街でもかなり有名なインディーズバンドだった。当然、メジャーレーベルからの誘いもきていた。
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