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しかし、メジャーレーベルとの契約交渉の時に、他のメンバーが暴行事件を起こして逮捕され、結局バンドは解散。もちろんメジャーデビューも出来なくなってしまった。

自分の夢を打ち砕かれ、将来への希望をなくしたんだろう。康市は、毎晩仲間と暴走行為に明け暮れていたらしい。

康市との出会いは、そのころだった。

深夜の自動販売機で、僕が缶コーヒーを買おうとしていた時の事だ。

お金を投入して、ボタンを押そうとした時、自動販売機の横で連れの悪ガキと、ウンコ座りしていた康市が急に立ち上がった。

そして、返却レバーを引いて、落ちてきたコインを自分のポケットに入れた。

「こら、何のつもりだ、てめえ」

「消費税だよ、消費税、あははは」

康市は、自販機から戻ってきた小銭を、手のひらでちゃらちゃらいわせてみせた。

僕は瞬間的に切れたらしい。その後のことは全然覚えていない。康市の首に手を回しヘッドロックしたまま自動販売機に彼の頭を何回もぶつけていたらしい。

我にかえると、僕は、赤色灯とサイレンの中にいた。救急車が1台とパトカーが2台、僕を囲んでいた。

震える足を押さえて前を見ると、ボコボコにへこんだ自動販売機が血まみれになっていた。

ゆっくり下を見下ろすと、頭から滝のように血を噴出し、口から白い泡を吹きだしている康市がいた。白目をむいて痙攣する様子は、まるでいけすから放り出された魚のようだった。

救急隊員が応急処置をしている間も、康市の痙攣は止まらなかった。真っ赤に染まった特攻服を着たまま、白目をむいて痙攣する姿は、死を想像させた。

僕の人生も終わりだ。そう思った。僕は、駆けつけた警官に手錠をかけられた後、両脇を抱えられて、パトカーに乗せられた。

やじ馬をかきわけ、走り出したパトカーの後部座席から見た風景は、とても静かで切ないものだった。


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