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ん? ひょっとして、僕よりペコちゃんの方が影響力あんのカモ。ちょっと凹んだ。無理に入れた気合は、すぐに緩む。
シャッター商店街をダラダラと歩き、アーケード入り口の所まで来ると例のたこ焼き屋に目が止まった。
ナニゲに見てみたら、あ〜ら素敵。伊東美咲バリの美人なお姉さんがいるじゃありませんか。たこ焼き屋の看板娘にしとくにはもったいない。
「ふ〜〜ん、まあ、佐藤が惚れるのもしょうがないか」
そう思いながら、彼女をチラ見した後、先を急ごうとした。そしたら、僕の周りから人の気配が消えていた。
振り返ってみると、みんな例のたこ焼き屋の彼女と、楽しげに話していた。こ・い・つ・ら・は・よぉ〜〜さすがにキレタ。
「てめえら、油売ってんじゃねえ。イクゾ〜〜〜〜〜」
腹のそこから叫ぶと、僕の声がシャッター商店街に響いた。さすがにびびったのか、みんな慌てて走ってきた。
「何やってんだ、てめえら。ちったあ気合いれろよ。ゆるすぎんぞ」
「い、いやその、賢一さん、メルアドもらったんですよ。メルアド。手書きのメモですよ。結婚、結婚、プレゼンの帰りに本屋によって、ゼクシィー買わなきゃ」
いつも人を小馬鹿にしたような、そっけない態度しかみせない佐藤が、異常なくらい興奮している。
「あのさ、佐藤、今時メルアド教えてもらった=結婚って考えは……」
「京介、よせ。佐藤のこのテンションを、プレゼンまで維持させよう」
僕が小声で耳打ちすると、京介は呆れた顔をしたまま、うなずいた。
「よおおおおおっし、今日のプレゼンは頑張るぞおお。ビッグプロジェクトをモノにして、彼女にプロポーズだ。賢一さん、僕、賢一さんの会社に入って本当によかったです」
「いや、だから、今日のプレゼンを成功させて無事に仕事とっても、彼女が結婚してくれるとかそんな話は……」
「京介、よせ。そっとしておいてやれ……」
「そだね……」
握りこぶしをつきあげて力説する佐藤の妄想に、僕も京介も言葉が続かなかった。ものすげえ暴走ぶりだ。まあいい。このテンションをプレゼンまで維持して、しっかりした仕事をしてくれれば。
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