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「え〜まじっすか? 賢一さん、勘弁してくださいよ」

「まあ縁起かつぎだからな。四の五の言わねえでやるぞ」不平を言った康市を、京介がなだめた。

「ほらほら、みんな円陣組んで」

「たくもう、しょうがないなあ」康市が、かったるそうな顔をして、円陣に加わる。

「じゃあいくぜ! 好きな料理は、イ・タ・リ・ア・ン。そして君はとても、ス・テ・キ・ヤ・ン。Yo! Let’s say」

僕がラップ調で声をかけると、全員がもう一度同じフレーズで声をかける、独特のグルーブ感のリズムの中で、興奮が加速する。

「say again オレラ最高。オレラ最強。ヒュイ・ゴ〜Yo! Let’s say」

「オレラ最高。オレラ最強。ヒュイ・ゴ〜〜〜Yeah〜よーし、決まったな」

何ともいえない一体感だ。きっと、学校でもギャングでも暴走族でもバンドでも味わえないだろうな。

しかし、僕と京介以外は、あまり好ましく思ってないらしい。みんな円陣を組んだ手を離すと、誰とも目を合わせない。

たしかに、若干コッパズカシイものはある。これをやってる最中に、来客でも来たら、一日中、オフィスが無言になってしまいそうだ。まあいい。

もともと、まとまりが弱いんだから、こうやってたまには、きっちりネジを締めないとね。

「よし、じゃあ全員いくぞ。ペコちゃんさあ、吾郎が来るまで一人になっちゃうけどカンベンね。何かあったら、僕か京介にメールして」

そういうと、ペコちゃんは、携帯を取り出した。僕の携帯が鳴った。

「だいじょうぶですぅ がんばってきてください!(*‘-^*)b」

「ありがとう。じゃあ、頼んだよ」ペコちゃんの肩をたたくと、僕は先を急いだ。

オフィスを出ようとすると、ペコちゃんが追いかけてきて、ドアの前で敬礼して見送ってくれた。

みんな、一人ずつペコちゃんに敬礼をしながらオフィスから出た。なんだ。円陣組むより、コッパズカシイこと、平気でできるんじゃん。


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