「でも、お前の車は…」
「まあ、いいから。レッツラGO」
彼にいわれるがまま、車を駐車場から出すと、ダムの外周を走った。
ゆるやかなカーブとストレートを抜けると、ヘアピンカーブに差し掛かる。
その時、泰蔵が話し始めた。
「下浦ダムは、バトルをするにはたいして難しいコースじゃないんだ。でも、ここからのヘアピンで素人は抜かれるんだ。この、GT-Rもストレートは早いが、さすがにコーナーは他の車より弱い」
「じゃあ、やっぱドリフトなんかやるの?」
「いや、やらない。本当はドリフトなんて、レースに不向きなんだ。走行している間、一時的に車が滑っている状態になるからな。あれは、パフォーマンスだよ」
「そうか、じゃあ、どうすりゃいいんだ?」
「よし、ここで、ギヤーをセコまで落とせ」
「うっ。落ちない」
「オイ・オイ・オイ。ダブルクラッチって知りませんか?」
「シラネエよ」
「よし、この泰蔵様が教えてやるよ。次のカーブが来たら、ギヤーをニュートラルに入れてアクセルを踏んで一回空ブカシしてから下のギヤーに入れてみろ」
「……」
彼にいわれた通り、カーブに差し掛かった時にダブルクラッチをやると、ギヤーがセカンドまで落ちた。
「よし、車が安定しただろう。こんな感じで、出来るだけブレーキを踏まず、ギヤーのアップダウンとアクセルコントロールだけで走るんだ」
「なるほど、確かにコーナーも車が安定して走りやすいな」
ダムの外周をグルグル3〜4週し車に慣れてきたら、泰蔵が観光案内の看板がある大きな駐車場に入るように指示した。
彼は、駐車場に入ると自分の車に乗り込み、大きな声で叫んだ。 |
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