無料オンライン小説 COLOR 悪魔の抱擁



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狭い独房の中で、いつの間にか自分の人生を見つめ直している自分がいた。

どこで、人生の歯車が狂ったのだろう?

今日の朝までは、順調だったハズだが……。

僕を、はめたのは誰だ?京介?いや、上原?いや、彼らは役割を演じたにすぎない。

奴らは、僕を実質的に落とし入れた実行犯だ。だが、裏で糸を引いている奴が必ずどこかにいる。誰だ。誰なんだ?

そう言えば、臨時取締役員会に顔を出した時の、二人の目の色がなんとなく薄青く……いや、赤紫っぽく輝いていたな。

それより今は、この状況から、どうやって脱出するか考えないと。とはいえ、さすがに脱走は無理だな。

途方に暮れていると、食事が運ばれてきた。もう、夕方になったのか。さすがに精神的に疲れているようだ、食欲がまったくわかない。

でも、こういう時だからこそ食べておかないとダメだ。食事に手を伸ばすと、思ったほど不味くはなかった。しかしながら量が少ない。

明日からは、売店で何か買おうかな。

食事が終わると、刑務官が点呼を取りに来た。僕の称呼番号507号を告げると、刑務官は食器がのったトレイを小さな小窓から取り出して立ち去った。

点呼が終わると、仮就寝時間が訪れた。

もう、夕方の5時か。そう思いながら、布団を敷いて横になった。

仮就寝時間になると寝てもいいのだが、さすがに寝付けない。

狭い部屋の中で、大きな溜め息をついた。

そういえば、理香は今頃どうしてんのかな?

初めて彼女に会った日のことを思い出した。

不思議なものだ。今まで、抱きしめるだけで心が安らぐ女性にはあったことがない。

また、理香に会えたら、心が安らぐだろうな。ツキを取り戻せるかもしれない。いや、待てよ。理香に出会ってから、おかしなことが続いてる。実は、彼女が黒幕じゃないのか?

まあ、それはないか……。オツムの方はからっきし弱いからな。

とりとめのないことを考えていたら、いつのまにか就寝時間になっていた。部屋の明かりが突然消えた。

暗い部屋の中で、あれこれ考えながら眠りに就こうとしてみたが、やはり寝付けなかった。


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