無料オンライン小説 COLOR 悪魔の抱擁



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塀&HEY=DAY

拘置所の駐車場で護送車から降ろされると、刑務官に連れられてドアをくぐった。僕の後ろで鉄製の扉が重たい音をたてる。冷たい鈍い音だ。逮捕されたことを改めて実感した。そのまま刑務官について歩き、一番奥の部屋に着くと、彼らは腰縄と手錠を外してくれた。

「所持品を預かります。また、あなたには身体捜索令状が裁判所から発行されていますから刑事訴訟法に基づいて身体検査を行います」

携帯や財布のほか、ポケットに入れていた品物を出した。素直に取り調べに応じると思われたのか、特に詳しく調べる必要がないと思ったのか分からないが、身体検査は簡単に終わった。

「これから、ここでの生活について説明します。ついてきなさい」

再び、手錠と腰縄をかけられた後、刑務官の後について歩き始めた。

自分の独居房の前まで連れて来られると、刑務官に拘置所でのルールを説明された。

まあ、基本的に、こんな感じだ。

自分の持ち物は、歯ブラシとタオル以外は持ち込めない。名前ではなく番号で呼ばれる。今日から僕は507号と呼ばれるらしい。刑務所と違うのはある程度の自由が認められていることだろうか。たとえば、本は1日3冊まで借りられる。着替えが欲しい時は、貸してくれる。売店で菓子類を買うこともできるといった具合だ。

「507号、ここがあなたの房です。中に入りなさい」

僕が足を踏み入れると、刑務官は無言で鍵をかけて立ち去った。

ふ〜〜。何だかんだ言って自由を奪われたな。

この瞬間、絶望感がどっと込みあげてきた。

四畳半の独房の中には、洋式トイレの便座と洗面台と小さな机、そして布団が1組用意されている。窓があるが、鉄格子の間から日の光が僅かに差し込む程度で、景色を眺める事は出来ない。

とりあえず横になったり、寝そべったりしてはいけないようなので、その場に腰を下ろしあぐらをかいた。

つらいな……。その一言だけしか思い浮かばない。


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