「キィ〜ギィ〜ましたよ」
パーティションの裏で誰かが恨めしそうに呟いた。
次の瞬間、佐藤が僕に飛び掛ってきた。
「さっきの話、聞いてましたよ。いや〜よかった。これで、やっと僕も学生時代の友人に良い顔出来ます。さんざんっぱら、大企業の職を蹴って、自滅するITベンチャーに入ったなんて馬鹿にされてましたからね。おめでとうございます」
佐藤が、両手で握手を求めてきた。
「まだ、決まった分けじゃないよ。それにキミ、大企業がいやだからITコンサルティングに入ったんじゃなかったけ?いまさら気にすることでもないでしょうに」
「まあ、それはそうなんですが。妻の両親も大手企業の方が良いってウルサイんですよ」
「でも、あれだろう。お前の嫁って、テキヤだろう?」
「失礼な。あれは、デリバリー・フード・サービスです」
「同じようなもんじゃねーか。要はたこ焼き屋の娘だろう」
「あ、賢一さん。言ってはならないことを言いましたね。フフフ…。あなた、触れては、いけないゾーンに侵入したらしいですぞよ」
こいつはヤバイ。
早く話を変えなければ。マシンガンで蜂の巣にされるかもしれねえ。
「そ、そう言えば、京介ぜんぜん顔ださないな。佐藤君は何か聞いてる?」
「そうですねー。って、そんな話で僕が騙されるとでも思ってるんですか?ちゃんと、謝罪して頂きたい。当方はまことに遺憾に感じ、強く謝罪を要求するものであります」 |
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