ヤスオは椅子に座ると窓を流れていく景色を眺めている。きっと電車が大好きなのだろう。
京介はヤスオの右隣の席に座ると週刊誌を読み出した。
自由が丘を過ぎると、また静かになった。多摩川を越えて川崎に入ると、すこし和やかな景色が続くせいか、眠くなった。
「ケンチャン、降りるよ」
うとうととしている間に、横浜駅に着いた。ブレードランナーに出てくるトンネルの中のような景色の中に、「横浜」と書かれたプレートが浮かんでいる。
ヤスオに続いて、あわててホームに下りた。頭上に、JR・相鉄線・京急線乗り換えというプレートが目に飛び込んできた。みんな無言のまま、地上に向かうエスカレーターに乗っていく。さすがターミナル駅だけはある。でも人の移動は、東京とさほど変わりがないように見える。
「どうする?次の電車に乗れば、みなとみらい線直通で中華街まで出れるけど?」
ヤスオから尋ねられて、答えにこまった。中華街にあるパソコンからパープルパーツが発生したことはわかっているが、正確な場所まで特定はできていない。
まさかしらみつぶしに中華街の店を当たるわけにはいかないし、かといってここで立ち話をしていても始まらない。
「あの……、僕のオバサンが中区の元町で雑貨屋やっているんだけど、とりあえずそこに行ってみる? 手がかりになる物はないかもしれないけど、とりあえず今の街の状況なんかわかると思うんだ……」
「そうだな。悪いけど、世話になっていいかな?」
僕がそう言うと、ヤスオは、自分の携帯電話でオバサンと連絡を取り出した。
「だいじょうぶみたい。行こうか?」
「ええと、元町っていうと、JRに乗り換えて石川町だっけ?」
「それでもいいけど、かったるいから、タクシー使おうよ。20分もしないでつくから」
「そうだな。だったらそうしよう」
僕たちは、そのまま地上に上がって、改札を出た。駅前のタクシー乗り場でタクシーをつかまえて元町にむかった。平日の横浜は、東京とさほど変わりないが、やはり港町らしい雰囲気がある。駅を離れるにしたがって、観光地らしい建物や公園が目立ちはじめた。20分くらい行くとヤスオのオバサンが経営する雑貨屋が入っているテナントビルに辿り着いた。
「ここだよ。さあ、行こう」
ヤスオがビルに入っていったので、僕と京介は、後に続いた。エレベーターに乗り込むと、ヤスオは、手馴れたふうに3階のボタンを押した。 |
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