無料オンライン小説 COLOR 悪夢の夜明け



 > トップ

廊下に出ると奥のエレベータまで走った。上のボタンを連打する。エレベーター早く来い。やべえ、相当ストレスたまってるな。

しばらくするとピンポーンという音と同時にドアが開いた。

よかった。中には誰も乗っていない。屋上のボタンを押すと、ドアが閉じて、一人になったエレベーターの中で、大きく深呼吸した。

エレベーターが屋上へ向かう時に何度も深呼吸をした。持病のエリート・アレルギーが噴出しそうになっていたのだ。「階級」とか「肩書き」を傘に話す連中が僕はとても苦手だ。

エレベーターが止まり再びドアが開く。僕はネクタイを軽くほどくと、ゆっくりと歩き出した。奥のドアを開けると、そこにはスロータイムな風景が広がっていた。

富国電気の屋上は東京都の緑化計画推進の影響もあって、小さな公園のようになっている。コンクリートの空に浮かぶ、楽園のような癒される場所だ。

さすがに就業時間なので誰もいない。

僕は、ベンチに座るとスーツの内ポケットからタバコを取り出すと火をつけた。

空を見る。東京に出てきて、やっと空を眺める事が出来たような気がする。美森市はどっちかな。みんな今頃どうしてるんだろう?

ほんの3ヶ月前まで、気の合う仲間とワイワイやっていた日々が懐かしい。

ブルー・アース・プロジェクトが動き出すと同時に、ITコンサルティング社は前評判だけで急成長していった。だが、結局自分で立ち上げたプロジェクトで、僕は会社から離れることを考えなければいけなくなった。

富国電気の問題だ。富国電気は栗原一族のオーナ企業であり、誰かが後を継がなければいけない。親族で今の事業を継承できる人間は僕しかいないのだ。

僕には無関係だが、叔父にとっては深刻な問題だった。富国電気は関連企業を含めた社員数は2万人以上もいる。その社員の家庭や生活を守るために、今の経営基盤を継承できる後継人物を探すのは、避けて通る事の出来ない問題だ。


PR広告
Copyrights (C) 2005 COLOR. All Rights Reserved