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ゲートバーが上がると康市の車の運転席側に走った。

「康市、今から言うことをしっかり頭にインプットしてくれ。どんな事があっても制限速度は守るんだ。慌てるな、どんなに急いでも、DVDが届かなかったら何の意味もないから。こういう時には、大事故が起きる危険性があるから慎重に行動してくれ。

お前が戻って来るまで、俺たちが上手くつないでいるから安心しろ。最悪もし戻ってくるまでに時間がかかりそうなら、無理をしないで、仮想サーバーにデーターを移せ。メールさえくれれば、後は何とかするから」

「うん、分かった」

「泣くんじゃねえよ。ミスは仕方がない。さっさと行け」

こっちが泣きたい気分だ。康市のダットサンは町の中に走り出して行った。もたもたしてる暇はない、プレゼン会場に戻らないと。そう思うといつのまにか走って正面玄関に向かっていた。

その時、携帯電話が鳴った。ひょっとして、京介がペコちゃんに連絡を取ってくれて何とかしてくれたのか? そう思って、画面を見たが、京介やペコちゃんからのメールじゃなかった。慌てて画面を見ると、Mr.Colorという差出人だった。

あの夜、僕のパソコンに「0」「1」の数字の羅列を送ってきたやつだ。反射的にメールをあけたら、今度は数字の羅列じゃなくて、「Let's go Crazy」という英文が書かれていた。

こんな時に迷惑メールよこしやがって。でも今はバカには付き合えない、急いで正面玄関奥のエレベータに飛び乗ると七階の小ホールへ向かった。

7Fにエレベーターがついた時、また携帯が鳴った。今度は康市からだった。車の中からメールを出したらしい。どういうわけか、車を出したとたん、信号が青一色に変わり、足止めをくらわずにオフィスに戻れたと書いてあった。

どうやら、まだツキから完全に見放されてないらしい。普段なら、信号に足止めされて、オフィスまで30分は楽にかかる。まだ10分弱しか過ぎてないから、プレゼンで時間を引き延ばせば、なんとか間に合うかもしれない。

無事にDVDを手にしたので、これから急いで戻ると書かれているのを見て、ほっとした。とりあえずこうなったら、じたばたしてもはじまらない。

「とにかく事故を起こさないように、注意して戻ってこい」とだけ書いてメールを返信した。


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