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「お前なにやってんだよ。後30分しかないんだぞ」

「仮想サーバーにネットからアクセスできるんですよね。そっちにはプレゼン用のムービーファイルは入れてなかったんですか?」

京介の横で現場の状況を冷静に判断しようとしている佐藤が康市に問いかけた。

「いや、肝心のそのファイルだけ入ってないんだ」

「じゃあ、オフィスに電話して、吾郎さんかペコちゃんに、DVDの内容を仮想サーバーに移してもらいましょう。そうすれば問題ないじゃないですか」

「いや、そのDVDの原版は、僕の机の引き出しに入っていて、鍵はここにある」

「え? でも合鍵くらいあるでしょう?」

「彼らが探すまでに、間に合わないよ。どのみち、彼らのスキルじゃ、何重にもパスワードをかけてある仮想サーバーに、新しくファイルをインストールするなんて無理だ」康市が申し訳なさそうに言った。

「ここでうだうだやってても仕方ねえ。康市は、事務所に戻ってさっさっとDVDの原版とって来い。たぶん、プレゼンに間に合わねえだろうから、俺たちで何とか時間稼いでおくから。佐藤、お前は悪いけど、先に7Fのプレゼン会場に行って、事情を説明して、時間を稼いでくれ」

「わかりました。なんとかプレゼンの順番を遅くしてもらうように交渉します」

佐藤がエレベーターの中に消える前に、僕たちは下りのエレベーターに飛び乗って、地下の駐車場に急いだ。

「急げ、もたもたすんな。正面ゲートで許可もらわないと、車を出せないから」

「わ、わかりました」

僕が急かすと、康市は周囲も確認せずにダットサンを走らせた。急発進できしんだタイヤが、地下駐車場の空間に響いて、エコーする。

車は、一気に正面ゲートに着いた。助手席から飛び降りて、守衛所にいた警備のオジサンに事情を説明し、康市の車を一時的に外に出す許可をもらった。


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