無料オンライン小説 COLOR キック・スタート・マイハート



 > トップ

受付にパスを見せると、小ホールの中に駆け込んで、僕は佐藤と京介の姿を探した。

「賢一、こっちこっち」

京介が小さい声で僕を呼んだ。既に一組目のプレゼンが始まっている。

「康市のやつ、ドジリやがって。後で、クンロク入れてやる」相変わらず、京介は興奮していた。

「とりあえず、僕たちのプレゼンは、康市が戻って来るまで引き伸ばさないといけないな」

「ペーパーの資料だけで、説明するのかよ。いくら佐藤が援護射撃してくれても、かなりきついだろうな」京介は、そう言うなり黙ってしまった。

想定外の出来事が起きてしまった。僕達は、この小ホール前面の大型ディスプレーにDVDのプレゼンテーションムービーを映し出す予定だった。

映像が終了すると、クライアントの各PCにプレゼンテーション資料が表示される。それを見てもらいながら、今度は京介と佐藤が説明を加え、質疑応答をやる計画だった。

この方法なら、緊張してドジル事もないし、強烈な印象をクライアントに与えることができる。完全な作戦だった。

それなのに、康市が肝になるDVDを忘れてくるとは。まあ、アダルトDVDをそのまま小ホールの大型ディスプレーに流したりしなかっただけ、まだましだと思おう。

しかし、なんとかしなければ。クライアントの信用を取り付けているター坊の面子もかかっている。散々推してもらっておいて「僕達プレゼンできません」なんていったら、それこそ切腹モノ。爆笑&信用ガタ落ちだし、僕の人生はオシマイだ。

思わず、拳を握り締めてしまう。手のひらに冷や汗がにじむ。それなのに、アイデアはちっともわかない。

京介は、手で顔を覆い、緊張のあまり、汗ぐっしょりだった。床にポタポタと汗が滴っている。

最後の頼みの綱。わが社のインテリ・佐藤は、膝の上で、拳を握っている。だめだこりゃ。すっかりビビってる。さっきのテンションはどうしたよ? ここで男を見せて、たこ焼き屋のお姉ちゃんにプロポーズするんだろ。黙り込んでいてどうする。


PR広告
Copyrights (C) 2005 COLOR. All Rights Reserved