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テレビには、夕方6時のトップニュースが流れていた。

アイドルキャスターで有名な女子アナウンサーが、P2P(ファイル交換ソフト)の被害ニュースを伝えていた。

P2Pソフトに感染したコンピューターウイルスのせいで、霞ヶ関の国家機密情報がネットに流出したと言うものだった。

カメラのフラッシュを浴びながら、情けない謝罪文を棒読みしている官僚の姿が大写しになった。

「こいつら最悪だね。税金で食ってるくせしやがってよ。どうせ、仕事中に無修正のエロ画像見てて国家機密がネットに流れたんだろ?世が世なら、打ち首もんだぜ。自分の仕事に誇りはないのかね。大和魂もクソ以下だな!」

ター坊が、少々興奮気味に話したせいか、となりでメガネを拭いていた白髪坊主のじいさんがこっちを向いた。

視線が合って、罰が悪そうな顔をしていたが「あんちゃんの言う通りだよ」といって大きくうなずいた。

意見が一致して気分がほころんだのか、ター坊は、じいさんにタバコを差し出した。

じいさんは、片手を軽くあげて礼を言うと、タバコを1本取り出しして口にくわえた。

そして、ター坊が差し出したライターの火でタバコの先をあぶった。大きく煙を吐き出したじいさんは、言葉を続けた。

「それにしても、この国はどうなっちまうのかねえ。俺たちの世代は、庶民からお役人まで一丸になって、国のために働いたんだが」

ター坊や、じいさんの感じていることは、おそらく日本中の人が思っている事なのだろう。

このじいさんが若かったころの日本は、多かれ少なかれ、国の発展を考えて生きていた人がいる。


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