無料オンライン小説 COLOR 人生は振り返るもんじゃないんだ!



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目線が合うと、彼女は、はにかんだ笑顔を見せた。

そう、彼女はメールかチャットでしかコミュニケーションが取れない人なのだ。

詳しいことは知らない。

ただ、彼女が入社した後、たまたま訪ねてきたお母さんと一度話したことがある。

はっきりとは尋ねなかったけど、中学の時、ひどいいじめにあって、引きこもってしまうようになったと言ってた。

それ以来、メールやチャットでしか、人とコミニュケーションが出来なくなってしまったらしい。

勉強も出来て、すごく快活で明るい子だったらしいけど……。

詳しいことを聞く気もないけど、要はそれだけ彼女の通ってた中学がひどかったってことだろう。

うちの会社を受けに来た時も、不思議な感じがした。

就職試験とはいえ、紺のリクルートスーツを着てきたのは彼女だけだったし、面接で何を尋ねても、口ごもるばかりだった。

横柄な受け答えしかできねえ、蹴りくらわしてやりたくなるような、ギャング上がりのクソガキ(僕もだけど)とか、ガンプラを手に握り締めたやつや、迷彩服で面接会場にやってきた、筋金入りのキモオタの中で、彼女は明らかに浮いていた。

ほんと、まじめすぎるくらいマジメなのだ。

面接試験を待つ間、ずっと膝の上で両手を握りしめて、震えていたような気がする。


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