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それで、どうせ一度の人生だから、頑張れるだけ頑張ってみるかって思ったのよ。
で、後は運に恵まれたかな。いつのまにか、時代の寵児なんていわれるようになった」
「俺も同じような感じかな。広島行った後、高校入ってダラダラと学校行っててさ、周りのノリで大学受験を考えたんだけど、記念のつもりで東大受けたら受かっちゃったんだよね。
早稲田とか慶應落ちたのにさ。で、商社に入ったんだけど、なんか違うんだよね」
「違うって何が?」
「うまく言えないけど……なんでこんなことやってるんだろうって感じかな。それで、会社やめて広島の実家に戻ったんだ」
「親は泣いただろ? 東大出てエリート商社マンを棒に振ったとなると」
「そりゃもう。実家もいづらくなったから、こっちのバアチャンの家に逃げ込んだんだよね。社会人経由ニートって感じ? それでしばらくぶらぶらしながら、バアチャンの病院とか買い物とかに付き合ってたんだけど、なんか、色んな事が見えてきたんだよね」
「どういうことよ」
「この国のおかしい所さ。ある日さ、バアチャンの通院している総合病院に付き添って行ったら、診察室の前を通った時に、中から老夫婦が大声を出して話してたんだ。
どうやら医者が保険が効かない治療を勧めてるみたいなんだけど、金がないバアちゃんだったみたいなんだよね。
泣きながら、命には代えられません。お金は家を売ってでも作りますから、診てくださいって言ってたよ。その時、この国は狂い始めてると思った。
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