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ペコちゃんが、コーヒーが入ったカップをトレーに乗せてスタッフルームに入ってきた。
彼女は、僕のコーヒーだけ別に入れてくれる。悪い気はしない。
僕の目の前までくると、彼女は机の上にカップをそっと置いた。
「ありがとう。ペコちゃん」
僕がそう言うと、二回お辞儀をして、逃げるようにオフィスに戻っていった。彼女の心が完全に開くのはいつなんだろうな。そんなことを思いながら、コーヒーはそのままにして、康市の側に寄る。
「康市よ、調子どう!」
康市は、ヤンマガから目を離さなかった。
さもかったるそうに「あ、うん〜」とか答えながらページをめくってやがる。
うちの会社は、こいつの技術力で持っている。今までうちの会社で手がけたシステムの中で、致命的なバグや不具合を出したことがないのも、こいつの力が大きい。
とはいえ、食えない部分もある。
あまりの協調性のなさに、他のスタッフが振り回されっぱなしなのだ。
自分の担当している部分の修正箇所を、他の技術スタッフに連絡しなかったりするのはしょっちゅうだ。そのせいで、とんでもないトラブルにつながったこともある。
そのたびに、こいつが自分一人でシステム全体を修正してしまうから、結果的には丸く収まるけど、こいつのコミニュケーション力不足のせいで、みんなが振り回されるのはたまったもんじゃない。
スタッフ全員がやきもきしている。社長の僕も、その例外じゃない。
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